木地挽きについて

山中漆器の発祥は木地挽きが始まるところから発展してきました。そのため山中の木地は、他の産地とは異なった高度な技術で、薄挽きや筋挽きを生かした優れた木地が特徴です。

1、木地の種類と特徴

山中漆器では主に、欅、栃、ミズメなどの木材が使われています。これらのほかに栗、松、楓などの木の用途に応じて使われています。

山中漆器を販売する瑾齋(きんさい)のお椀を山中漆器の木地師が木地を挽く画像
欅(けやき)について
「欅」は私たちの生活の中でもよく見かける木、すなわち里木(さとき)です。そのため安定して供給が可能で、古くから山中漆器でも多く使われてきている材料です。大きな欅は、家具や建材に使われ、漆器に使われるのはそれらに使えない曲がった部分や細い部分となります。硬くて、狂いづらい良質な材料のため、お椀などに多く使われています。またきれいな木目を生かした拭漆(ふきうるし)の物に適しています。
栃(とち)について
「栃」は、欅などの材料に比べると成長が早く、大木として育ちやすいため、昔から、菓子鉢などの大きな商品や作品に使われました。ただ、狂いやすく柔らかいので、お椀の木地にはあまり適していないと言われます。栃の大木は山奥にあり、最近では、自然保護の影響で市場に出ることが少なくなってきました。そのため、栃材は価格が高くなり、漆器の材料としては貴重なものとなりつつあります。
ミズメについて
「ミズメ」は、カバノキ科カバノキ属の木で、木目がはっきりしていないのが特徴です。木目があまりはっきりしていないので、木目が見えない塗下用の木地に使われていました。欅と同じように固く、狂いづらいため、非常にうすく挽くことができるため、最高級品として扱われることも多いのがミズメの漆器です。

2、山中漆器のアイデンティティ「縦木取り」


山中漆器と他産地の木地との大きな違いは縦木取りといわれる材料の取り方にあります。
「縦木取り」は木が立っていた状態で輪切りにし、木取りをする方法です。

このとり方は「横木取り」といわれる木を横にして板状に製材したものより木取りをする方法より、効率が悪く大きな物がとりにくいという欠点がありますが、「縦木取り」は変形が少なく、割れにくいというメリットがあります。

この特長を生かして山中漆器は蓋物、椀、棗などを精巧なものを作ってきました。

3、荒挽き〜乾燥、そして木地挽きまで

荒挽き

「荒挽き」とは木を生の状態で、製品の大体の形に挽くことです。生で挽かれた「荒挽き」はこの後、木地師のところでで乾燥されます。乾燥すると「荒挽き」は少々小さくなりますから、「荒挽き」は少々大きめに仕上げておきます。

木地の乾燥

乾燥というと水分をゼロにすることと考えそうですが、漆器においてはいかに木材中の水分率を安定させるかということが乾燥の概念です。乾燥させると狂いやヤセという現象が発生しにくくなります。乾燥した木地の寝かしの時間を含めて乾燥期間は通常2ヶ月以上かかりますが、最近では真空乾燥等の新しい方法も使われ、その期間が短縮されています。

木地挽き

乾燥した「荒挽き」を轆轤に掛け、製品に仕上げます。木地師は自分で木地を挽く鉋をつくります。しかもその鉋はひとりひとり自分で研究し、作り上げた自分だけの道具です。このような努力から、山中独自の加飾挽きといわれる多くの筋挽きが誕生しました。その筋の数は40種類とも50種類とも言われています。

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